家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

JPCAメンタルヘルス委員による公開ケースカンファレンス

2月25日に日本プライマリ連合学会メンタルヘルス委員でオンライン公開ケースカンファレンスを行いました。休日にも関わらず50名ほどの方が参加くださいました。

専攻医の先生から事例提示いただき、その後ディスカッションを行いました。

話題になった内容として、

・めまいの鑑別と対応

・身体症状症とパニック障害の鑑別と対応

精神疾患の診断の伝え方(特に精神疾患に否定的な方へ

・仕事の価値観を確認する時や方法

・原家族が価値観に与えている影響の確認の方法や評価

・短い外来で認知行動療法を行うときの工夫やエッセンス

パニック障害に対する認知行動療法以外のカウンセリングの工夫

・転移・逆転移に気がついたときにどうするのか

・診断書の病名の扱い方

・精神科へ紹介するときの工夫や注意点

多くの実践的内容が議論なされ、学び多い時間でした。診断・診断書の書き方・認知行動療法の実践方法・転移/逆転移は前回も議論されていたので、現場で気になるポイントなのだと思います。

個人的に特に勉強になったのは、表面上の悩みの裏の語られぬ悩みにどのように気が付くか、です。

受診時に、長期にわたる悩みを語られる方は多いのですが、大事なことは、それでも今まで受診せずにいたことであり、それがこのタイミングでなぜ相談されたか、です。そこに本人も気づかない「声なき悩み」を知るヒントがあるのだと思いました。

会の進行中にも、チャット欄に多くの意見や質問を記載いただき本当にありがとうございました!企画を進めてくださった新野先生、貴重な機会をありがとうございました。

次回は2024年6月の日本プライマリ・ケア連合学会学術大会@浜松で現地開催で行います!現地ならではの密度の濃いディスカッションができたらと楽しみにしております。ぜひ奮ってご参加ください。

合同面接で深い感情(一次感情)をいかに扱うか 〜家族心理学会主催の研修会に参加して〜

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先日、家族心理学会主催の「夫婦・父子並行面接のケーススタディ」の研修会に参加しました。

家族内の葛藤や意見対立を認める際、個々に本音を聞こうと個別に会って面接する場面がよくあると思います。確かに、個人の面接では患者さんや家族の本音を深く聞き出しやすくなります。

しかし、個別の面接では家族間のやり取りが見えにくかったり、互いの考えを共有できなかったり、何よりも家族それぞれが支援者と話していることを他の家族が知った時、家族内の不安や不信感を増大させることもあります。

そのため、家族で一緒に話し合う家族合同面接(または家族カンファレンス)が重要となりますが、そこには難しさもあります。

家族間の葛藤が目の前で再現されると支援者の心理的負担が増し、場合によっては巻き込まれたり、意見の対立に不均衡に肩入れすると診察がドロップアウトする可能性があります。

本研修では、合同面接のコツを講義だけでなくロールプレイを通して学ぶことができました。

特に印象的だったのは、表面的な感情(二次感情)ややりとりの裏にある深い感情(一次感情)までをどれほど合同面接で扱えるか、です。

例えば、互いに批判し合う家族において、相互に向けられた怒りを扱うだけでは不十分で、奥底の嫌われたくない思いや孤独で理解してほしいという一次感情まで扱えるかが面接の結果を左右します。

過去の経験を振り返ってみても、面接で一次感情まで扱うことができた時、家族の関係性が変化したことを思い出します。

これを合同面接で扱うことは個人面接で扱う以上に難しく、それだからこそ重要性であると改めて思いました。

研修を通じて、普段の診療を見直すとても良い機会になりました。

※写真は先日京都に行った際に立ち寄ったイノダコーヒ本店(コーヒーではない)の写真。京都に溶け込む町家造りの外観から想像できない、昭和のレトロな雰囲気。本研修とは関係ありません。笑

高校にて特別保健体育の授業

、「渋幕卒業生医師による 特別保健授業 感染症 がん がん x ストレス 2024年2月15• 16日 14期 期小橋孝介 鴨川市立国保病院 小橋 孝介 鴨川市立国保病院 16期 河南 真吾 吉野川医療センター 21 北野 峻介 飯塚病院 穎田病院 22期 宮本 侑達 ひまわりクリニック」というテキストの画像のようです

母校の渋谷教育学園幕張高等学校の高校一年生に対して、特別保健体育の授業を卒業生医師の先生方と行いました。

毎年行われ、かれこれ今回で10年目。私も初期研修医の頃から関わらせていただいていますが、もうそんなに経つのかと驚いています。

今回は昨年と同じく、性感染症、がん、ストレスコーピングについてお話ししました。

私は性感染症についてお話ししました。性感染症が、より一人一人に身近な問題に感じてもらえたらと思いますし、講義をきっかけに性や将来のパートナーについても考える機会になれれば嬉しいです。

質問も講義内容に関連した質問以外にも若年妊娠、安楽死、ネット依存、医師の働き方改革、女性医師のキャリアなど鋭い質問がたくさんあり、とても刺激的な時間でした。

10年前は生徒の気持ちの方が理解できていたのが、最近は先生の気持ちの方が理解できるようになり、自分も歳を重ねてきたことを実感。嬉しいような悲しいような。

このような機会を定期的にくださる先生方、ありがとうございました!

ちちぶ圏域ケア連携会議研修会にて家族療法関連の講演

2月3日にちちぶ圏域ケア連携会議研修会にて、聖路加国際病院心療内科山田宇以先生と一緒に「事例から学ぶ明日から役立つ家族療法のエッセンス」の講演会を行いました

秩父地域 は「ちちぶ版地域包括ケアシステム」 という1市4町協働で地域包括ケアシステムを構築をされ、全国的にも珍しい体制です。

毎月何かしらの勉強会をされており、その頻度の多さに皆様の意欲の高さを感じました。また、コロナ禍以前は、講演会の時に医療福祉従事者で演劇を行ったり、今はラジオ番組を持ったりと、実にマルチな多職種の方が多いと実感しました。

講演では、冒頭で事例をもとにしたグループワークを行い、後半は病気と家族の心理、支援に役立つ家族療法の技法を中心にお伝えしました。

師匠である山田先生の講演はいつもながら勉強になります。軽快なテンポに、共感を誘う例え話がふんだんに織り込まれ、それをしっかりと理論化されていく。何回聞いても新たな発見があります。

高齢化社会に伴い、家族単位の支援はさらに求められます。

高齢化により病気を抱える方は増え、その家族もまた大切な支援対象であるため、より「家族も含めた支援」が求められます。また、独居高齢者は増え、支援者は家族役割代行が求められ「家族のような対話」が求められるでしょう。

さらに、核家族に伴うきょうだい間の物理的・時間的距離の開きは、終活に伴うきょうだい間葛藤の増加につながっていると感じます。現に、介護をめぐるきょうだい葛藤は支援者に相談され、支援者に「家族間葛藤に対する支援」が求められます。

今後も家族支援について深めていきたいと思います。

秩父市立病院の加藤寿先生、貴重な機会をありがとうございました!

家族に秩父行くと行ったら、三峯神社に行きたいと一緒に参拝。標高1000mの溢れる登山感に、心くすぐられ、今年はもっとアウトドアを楽しもうと思いました。

浦安市医師会にてグリーフ・ケアについての勉強会を開催

浦安市医師会主催で亀田総合病院緩和ケア室チャプレンの瀬良先生をお招きし、グリーフ・ケアについての勉強会を行いました。

昨年もグリーフ・ケアの勉強会を浦安市で開催しましたが、皆様から再度開催の要望もあり企画いたしました。

前回は総論的内容だったので、今回は各論として「罪悪感」をテーマにお話しいただきました。

「もっと早く病気に気づいてあげられれば・・・」

「私があんなこと言わなければ・・・」

「最期の時、間に合わなかったんです・・・」

死別を経験された方が、後悔や罪悪感を感じられることは珍しいことではありません。 

講演で印象的だったのは、支援者は「罪悪感を取り除く者としてではなく、理解者としていることが大切」という言葉。

自信を責めるご遺族にお会いすると、ついつい取り除こうと「そんなことない」と伝えたくなりますが、それはむしろ自分が居心地悪いさゆえかもしれません。

また、何を伝えれば正解というのはなく、支援者がその時感じたことをご遺族にそのまま伝えたら良いし、それが難しいならば無理に何か伝えなくて良いというのも、肩の荷が降りる思いでした。

グループワークでもたくさんの意見だけでなく、悩みも共有されました。死別と向き合うのは支援者もしかり、在宅医療の現場は感情労働の場だと改めて実感しました。

そう思うとこの勉強会は、日々死別に向き合う支援者側のグリーフ・ケアになっているのだと思います。

定期的な荷下ろし場として今後も開催をしていきたいと思います。

瀬良先生、ご準備いただいた浦安市医師会の事務の皆様、本当にありがとうございました!

東京ベイ総合内科にて家族志向のケアについての講義

先日、東京ベイ総合内科の先生方に家族志向のケアについてお話いたしました。

himawari-cl.net

普段臨床をしていて、特に役立つと感じている以下のポイントをお伝えしました。

・悪者探しをしない「円環的思考」とそれを捉える相補的/相称的パターン

・治療者も一部であることを意識する「三者関係」と三角関係化に巻き込まれた場合の対応

・「一定の状態を維持したい」ホメオスタシスとそのバランスを打ち破る家族ライフサイクル

今年度は、東京ベイ総合内科の先生方と事例検討会と共に、在宅医療、BPSモデル、行動変容、多疾患併存、家族志向のケアと家庭医療のコアになる内容をお話しさせていただきました。

貴重な機会をいただき感謝です。

東京ベイ総合内科と合同事例検討会

東京ベイ総合内科の先生方と事例検討会を行いました!

himawari-cl.net

同じ患者さんの入院中から退院後の様子の情報共有を行い、疾患のレクチャーをしていただき、ディスカッションしました。

印象的だったのは、どのような状態であれば退院して在宅に移行できるのか?というディスカッション。

「家に帰りたい時が一番の帰るタイミング」

「完璧なサービス退院すると、むしろご家族へのプレッシャーが強すぎてうまくいかない。ほどほどの環境で退院し、そこから作り上げていくことのほうがうまくいく」

という言葉が刺さりました。

入院病院→自宅・施設のトランジションナルケアを行う上で、貴重な情報だけでなく、視点の共有の場になっていると思います。

学情報のアップデートもしていただけ、合同勉強会とてもありがたいです。