家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

書評『結婚生活を成功させる 7つの原則』〜科学的根拠に基づく結婚生活〜

couple making heart shape with their hands

はじめに

結婚生活にはたくさんの方がコメントをされ、
さまざまな「噂」が流れています。
 
 
しかし、その大半は科学的な根拠に基づくものでなく、
ご自身の知識や経験、直感や信念に基づいて助言をしていることが多いです。
 
 
結婚生活が成功なのか、失敗なのか判断できる確実な科学的データは存在するのでしょうか。
 
 
それを示すのが『結婚生活を成功させる 7つの原則』です。
 
 
著者はジョン・M・ゴッドマン博士で、
ワシントン大学心理学教授、シアトル結婚・家族研究所の所長であり、
アメリカの夫婦関係研究の第一人者です。
 
 
この本では、650組の夫婦を14年間追跡調査した研究結果から導き出された7つの原則を紹介しています。
 
 
本ブログは『結婚生活を成功させる 7つの原則』をまとめています。
 

「別れる二人」は予想できる

ゴッドマン博士は夫婦の言動をわずか5分観察するだけで、
この夫婦がこれから幸福な結婚生活を送れるものか、
離婚の道を歩むものか、91%の正確さで予想できます。
 
 
別れる二人には以下の6つのサインがあるとのことです。
 
 
1. 出だしの悪い会話:出だしの悪い口論は、その後いかなる緩和策を出しても必ず悪い結果に落ち着く
2. 「四つの危険因子」:避難・侮辱・自己弁護・逃避、これらは夫婦関係に致命的
3. 危険要因の「洪水」:四つの危険因子に晒され続ければ相手を警戒し関係を断ちたくなる
4. ボディーサイン:ストレスがたまると脈や呼吸に影響を与える
5. リペアアテンプトの失敗(修復努力):どちらかが冷静になろうとしても、片方がそれに取り合わない
6. 悪い思い出:関係が冷え込むと過去の出来事も悪く書き換えてしまう
 
 
これらはすなわち、離婚する夫婦の特徴になります。
しかし、問題のリスクだけを知っていても、どうしたら良いか分からなければ解決はできません。
 
 
幸福な結婚生活を送っている夫婦の要因を分析することで、
以下の七つの原則を見つけ出しました。
 
 
①2人で「愛情の地図」の質を高め合う
②相手への思いやりと感謝の心を育てる
③相手から逃げずに真正面から向き合う
④相手の意見を尊重する
⑤二人で解決できる問題に取り組む
⑥二人で行き詰まりを乗り越える
⑦二人で分かち合える人生の意義を見つける
 
 
これらは、結婚には友情がその中心にあり、友情を強化する方法になります。
それぞれの原則について述べていきます。
 
 

原則1 2人で「愛情の地図」の質を高め合う

愛情の地図とは、配偶者の人生に関係ある情報を頭の中に描いてある図面です。
 
 
・配偶者の好きな食べ物は?好きな音楽は?好きな映画は?好きな言葉は?
・配偶者の親友の名前は?苛立たせている人は?
・配偶者の人生の信条は?人生哲学は?夢は?
・配偶者がこれまでに経験した最も特別な出来事は?最も苦しかったことは?
・配偶者に最近起こったことは?現在最も心配していることは?
など
 
 
愛情地図が描かれていなければ、配偶者を本当に知っているとは言えません。
子どもが生まれると67%の夫婦が結婚生活に不満を覚えるようになりますが、
残りの33%は不満を覚えず、その半分はかえって満足度が増したと報告しています。
 
 
満足度が増した夫婦に特徴的なのは、
常に相手の感情や考えを分かち合い、
詳細な愛情の地図を持っていたことでした。
 
 
愛情の地図は、ライフイベントでのストレスで脱線することを予防します。
そのためには、どんなに忙しくとも、1日の出来事を相手に伝えることを優先する必要があります。
 
 
また、少なくとも週1回は外食し、対話することも大事です。
 
 

原則2 相手への思いやりと感謝の心を育てる 

愛情の地図は単なる第一歩で、
「ただ単にお互いを知っている」だけでなく、
「思いやりと感謝の心」を生み出す手段とすることが大切です。
 
 
たとえお互いが好きであったとしても、
相手に対する思いやりと感謝の心が失われた時、
関係が壊れていきます。
 
 
常に配偶者に対してプラスの感情だけを心に留めておくことで、
たとえ二人が口論になっても、
結婚生活を悪化させることはありません。
 
 
思いやりや感謝の心があれば、
相手からの侮辱の言葉が少々あっても気に留めなくなります。
 
 
お互いが現在相手をどのように思っているか知る方法があります。
 
 
昔の思い出をプラスの感情で再生できる夫婦の99%は、
お互いに思いやりや感謝を持っています。
 
 
逆に、楽しかった記憶が歪められた時、
それは夫婦が救いを必要としているサインかもしれません。
 
 
もし、思いやりと感謝の心が自分にはないと知った時、
その心を再生するのに複雑な手段は入りません。
 
 
昔の相手に対するプラス感情を思い出し、言葉にしてみることです。
また、しばし黙想して、自分は相手の何に魅力を感じていたのかを思い出してみることです。
 
 
過去の楽しかった出来事を夫婦で話し合うことも一つです。
ほとんどの夫婦は過去の楽しい思い出を語ると、
その時の夫婦関係に戻りたいと願います。
 

two mugs with coffee on table

原則3 相手から逃げずに真正面から向き合う

ハリウッド映画は、ロマンスや愛情を大きく歪曲して伝えています。
現実のロマンスははるかに平凡なことで芽生えます。
 
 
それは、仕事の大変な中のちょっとした配偶者への電話だったり、
仕事をして家計を支えてくれることに対するちょっとした感謝だったり、
家事をいつもしてくれていることに対する感謝だったり、
ちょっとした買い物を手伝うことだったりします。
 
 
日常生活でいかに相手の注目・愛情・気持ち・関心を引こうとしているかが大切で、
それが「向き合う」ということです。
 
 
キャンドルライトの灯ったレストランで食事をしたり、
海辺での休暇を過ごすことよりも、
 
 
単調な日常生活でも配偶者が相手に感謝の気持ちを込めて、
「君はすごいね」とか「あなた凄いわ」というような言葉を掛け合うことの方がロマンスを育ててくれます。
 
 
お互いが向き合う第一歩は、
配偶者との毎日の小さな関わりを面倒なものとを思わず、
二人の関係に大きな違いを生むものだと認識する必要があります。
 
 
そのためには「夜二人になったら、その日の出来事を語り合う」が最も効果的緩和策になります。
特に「今日はどうだった?」と言葉をかけることは、外で受けたストレスを少しは解消してくれます。
 
 
毎日20-30分はこの時間に割くとよく、
ルールとして「家以外の生活で心にかかっていることはなんでも話し合うこと」にすると良いです。
 
 

原則4 相手の意見を尊重する

お互いの意見を尊重する夫婦では、
無視する夫婦より、はるかに幸福な結婚生活を送っており、
離婚率も低いことがわかっています。
 
 
特に、女性は相手の感情を理解しようと努力していることが多く、
言葉に耳を貸さないのは夫であることが多いです。
 
 
少し前に当たり前であった「亭主関白」の場合、その81%が離婚しています。
 
 
夫に必要なのは、権力の行使ではなく、
妻の意見から学ぼうとする器量です。
 
 
意見を仕事や性別を利用して押し通そうとするのではなく、
配偶者へ譲歩し、妥協することも大切です。
 
 
こうした行為は単に彼らの結婚生活を良くするだけでなく、
子どもの教育にも良い影響を与えます。
 
 
妻を受け入れた彼は「自分」より「自分たち」を自然に選ぶようになり、
自分の時間よりも子どもたちと会話したり、遊ぶことを選択することが多いからです。
 
 

⑤二人で解決できる問題に取り組む

夫婦が尊敬しあい、考えや意見を素直に相手に知らせてあれば、
たとえ問題が起こっても解決するよき手がかりとなります。
 
 
しかしいざ問題解決の場において、
相手を説得しようとしたり、同意できないものを抑え込もうとすると、
それまでの夫婦関係が壊れかねません。
 
 
夫婦が穏やかに話し合う方がはるかに建設的で、
その話し合いの手法を会得する必要があります。
 
 
多くの結婚セラピストが推奨する方法は、
「積極的傾聴」「アクティブリスニング」です。
 
 
相手の話を相手の立場で聞き、
相手と異なる部分について、
相手の立場で想像して言葉をかけるというものです。
 
 
しかし、これはどんなに仲が良い夫婦でも容易にできるものではありません。
そこで仲が良い夫婦の解決方法を調査した結果、次のような原則を彼らが守っていることがわかりました。
 
 
1. 話は、荒々しくなく、ソフトに切り出す
2. リペアテンプ(修復努力)を出し、また受け取るように努める
3. お互いに興奮を鎮める手立てをする
4. 妥協する
5. 相手の失敗に寛大になる(相手の良いところは両目で、悪いところは片目で見る)
 
 
これらは他人に対していつも気にしていることだと思います。
しかし、これが最も親密な関係にある配偶者には使っていないことが多いです。
配偶者にも他人と同じような気遣いをして話し合うことが大切です
 
 

原則6 二人で行き詰まりを乗り越える

解決できない行き詰まりの問題に当たった時にどうするかは大切なことです。
 
 
行き詰まりの問題を乗り越えることは、
問題を解決することではなく、
夫婦の日常会話にその問題が顔を出さなくすることです。
 
 
そうすることで、問題は二人の間に永遠の問題として残りますが、
お互いが傷つけることなく話し合える時まで、
問題を抱えたまま結婚生活が続けられるようになります。
 
 
この問題を避けて通るには、まずその原因を理解する必要があります。
大体そのような問題の背後には「人生の夢」が隠れていることが多いです。
 
 
人生の夢とは、希望・抱負・願望というあなたを形成している部分であり、
あなたの人生に目的と意味を持たせているものです。
 
 
自由を満喫したい、自然の中で生活したい、自分の能力を極めたい、
冒険したい、心の平和を求めたい、名誉を得たいなど。
 
 
大なり小なり、行き詰まり問題に出会ったら、
その問題の根本の二人の人生の夢の相違点を見つけることが大切です。
 
 
見つけられない場合は、
問題の根源が全て相手にあると決めつけていることが多いです。
 
 
行き詰まり問題から夫婦が脱却するためには、
この人生の夢を相互に知ることが大切です。
 
 

⑦二人で分かち合える人生の意義を見つける

これまでの6つの原則を根底で支えるもの、
それは人生の意義を二人で分かち合うという精神です。
 
 
結婚生活は単に子どもを育て、
家事を助け合い、
性生活をするだけではありません。
 
 
二人の精神的な世界を充実させる側面もあります。
そのため人は夫婦が正直に自分の信念を述べ合うことのできる雰囲気を作ることが必要です。
 
 
自分を無理に相手に合わせることはできません。
しかし、お互いに相手の考えを聞く寛大さを持てば相互の距離を縮められます。
 
 
分かち合える人生の意義を発見すればするほど、
あなた夫婦の結びつきはより強くなり、
結婚生活はより豊かで実り多いものとなります。
 
 
お互いの夢の違いを見つけたのであれば、
その夢をお互い尊重することが必要です。
 
 
それは一朝一夕でできることではありません。
結婚生活の改善は、夫婦でする長旅のようなもので、
毎日一歩ずつ小さな改善の道を歩みます。
 
 

まとめ

いかがだったでしょうか。
あくまでブログでは本の一部のみ記しました。
 
 
実際の本の中では、たくさんの事例が紹介され、
より具体的に7つの原則を理解することができます。
 
 
また夫婦で行えるワークもいたるところに散りばめられており、
本を読みながら夫婦で行うことでカウンセリングを受けたような効果を期待することができます。
 
関心ある方は本書を是非読んでみてください。
実りある夫婦生活を皆様が送れますように。