家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

ジャーナリストとHPVワクチンについて語る

f:id:kamenokodr:20221024214822j:image

とあるジャーナリストの方とHPVワクチンについて話をする機会がありました。医療者からみるとワクチンに対しての有効性や安全性もあるのに、何故報道機関があそこまで加熱したのか、そこにはどのようなすれ違いがあったのか、当時のことが気になり色々と伺いました。

 

やりとりしながら感じたのは、医療者が抱く感染症やワクチンと非医療者が抱くのイメージは大きく異なることでした。同じ用語で話していても全く異なるイメージを持ちながらやりとりしていたので、そこから大きなすれ違いが生まれていたのだろうと思いました。特に「劇薬」や「アジュバンド」など。今でこそ、新型コロナウイルスによって感染症やワクチンの理解は大きく進みましたが、当時はもっと共有することが難しかったのだろうと思います。

 

また、ジャーナリズムの根底の精神というのか困っている個人の声を届けたいという使命感を強く感じました。症状はワクチンと関連ない有害事象といっても実際にワクチンを打った後に苦しみ困ってる人がいるのも事実です。果たして、当時そのような方に医療者として寄り添うことができていたのでしょうか。そこには、検査で原因がよくわからないものに対する医療者の扱い方の不慣れさや「機能性身体症状」に対する誤解もあったのでしょう。

 

誰かが言っていたけれど、新しいものを取り入れたり、何かを変えるときに最も大事なのは「丁寧なコミュニケーション」。それを組織や医療者全体として行うことはより難しいことですが、医療者として、患者さんと医療者の理解の差を極力埋めるような相手の立場に立ったわかりやすい説明と、医学的によくわからないものに出会った時にはきちんと耳を傾けてる謙虚さが改めて大事だと感じました。

 

WHOはワクチン政策における3つの壁を「3C」と表現しています。「Complacency(無頓着さ):脅威と思っていない」「Convenience(利便性)接種までのハードル」「Confidence(信頼)有効性や安全性に対する信頼」特に信頼はとても大切で、ワクチンだけでなく提供する医療・医療者、政策を進める立案者・政府への信頼も含まれます。ワクチンに対する不安はどこから来るのか?何に不信感を抱いているのか?もっと敏感になろうと思いました。

 

※秋の深まりを感じる今日この頃。近所の公園への散歩が一番心地よく感じられます。