家庭医の学習帳

千葉で家庭医として子どもからご高齢の方までの診療に携わっています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

家族志向のプライマリ・ケア輪読会(2022年)「5章 日常診療への家族の参加」質疑応答まとめ

今年も亀田ファミリークリニック館山の専攻医の皆さんとの家族志向ケアの教科書『家族志向のプライマリ・ケア』の輪読会に指導医として混ぜていただいています。

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本を読みながら皆さんから出た質問に答えることをしていますが、診療現場での具体的な困りごとがわかったり、結構むずかしい質問も出たりと私自身もとても勉強になります。

先日は「5章 日常診療への家族の参加」の部分を扱いました。質疑応答のところをまとめています。

 

Q)子どもが欲しいけれど思っているが、パートナーに相談してもそれどころじゃない突っ張ねられ悩んでいる妻。どのように相談に載ったら良いか?

子どもの話は結婚前からもともと話していたのか、話していたけれど途中から相談できなくなったのかで大きな違いがある。まずは夫婦それぞれの子育てへの認識を確認する。

また「相談した」といっても実際にどのようなやり取りをされたか、普段からのコミュニケーションパターン(家族の機能面)を確認することも重要。妻としては大事なこととして相談したつもりでも、それが夫に伝わっていない可能性もあるし、そもそもどのようなコミュニケーションを夫婦でとるのかを確認することですれ違いの原因を確認することができる。

 

 

Q)本に「家族全員から家族図と家族歴を得ることによって時間が節約できる」とあるが、家族全員がいるほうが家族が忖度してしまって情報を得られにくいのではないか。

いろんな人がいたほうが、わからない情報が少なくはなるので節約にはなる。確かに、家族間葛藤が強かったり、未解決の問題がある場合は家族がいるから話しにくかったり、本当のことを言えないこともあるかもしれない。

しかし、その際に伝わる非言語メッセージ(俯く、無言になる、など)も大事な情報である。また、第三者である医療者がその場でうまく誘導することで、家族だけでは話せない内容を話し合い、それぞれの理解を深めることやそれ自体が治療効果を持つこともある。

 

 

Q)家族の情報も家族メンバーによって見方が異なることは多々ある。その際に、家族構成員それぞれの家族図を作るのか、それとも家族全体の家族図を作るのか。

結論からすると、家族全体の家族図を書く。家族図には事実内容の記載と関係性の記載の主に二つあるが、事実内容(年齢・病気・ライフイベントなど)は一つなので、家族それぞれで見方が異なりやすいのは関係性の記載のところ。関係性のところは各々の家族メンバーの視点も踏まえた上で、どのようにアセスメントして書くかである。

ただ、関係性はお互いへの見方の違いも含めてどのような関係かを評価して書けば良い。例えば、一方が関係が良いと思っていてももう一方が距離を置きたい場合、関係性が良いとは書けず、すれ違っているとなるので何かしらの評価ができる。

家族図はあくまで「家族全体の」家族アセスメントのツールの一つであり、事実を書きながらも適宜アセスメントしながら書いていくと良いし、仮説が違かったらまた書き直すくらいに思ったら良い。

 

 

Q)家族で面談しないほうが良いのはどのような事例か。

実際に明らかに一方からの家庭内暴力がある際に、暴力がエスカレートする可能性があるので原則行わないほうが良い。また、家族内葛藤が強く家族が来ても話し合いができないことが続く場合や、一方の苦痛が深くなる場合は個人面談や並列面談に切り替えることも考慮する。

 

 

Q)診察室で夫婦の一方が理不尽に見える攻め方をもう一方にした際にどうすれば良いのか。

必ずしも攻めることは悪いことではないし、それがその夫婦のコミュニケーションパターンであることもあるため、受け取り手に葛藤や苦痛が少ないようであれば、問題として扱うかを一旦考える必要がある。

受け取り手に苦痛や葛藤がある場合は扱うことも考慮するが、怒りは二次感情でその背景には不安、苦痛、悲しみ、恐怖、後悔、罪悪感などといった一次感情があるので、それをリフレーミングしながら伝えると良い。「旦那さんの体や今後について不安に思うとどうしても口調が強くなってしまいますよね。でもそれだけ心配しているんですよね。」のように。

 

 

Q)患者さんではなく家族にないかしらの精神病理があって、患者さん自身がうまくいかなくなる事例に関してはどのような距離感で家族に関わったら良いか。家族に何かしらの診断をつけて関わったほうが良いのか。

あくまで外来に本人の相談に来ている際には、家族は同じ支援者の立場で相談に乗るし、家族に診断をつけて関わることはお勧めできない。家族の情報も本人からだと部分的であるし、患者さんにコミュニケーションがうまくいかない口実にされ、医療者・患者vs家族の三角関係を生んでしまいがち。

外来ではあくまでは「そんな家族に患者さん本人はどう関わるか?」について扱い、家族ではなく、本人と家族の関係の問題について言い換えながら関わると良い。また、家族が診断が必要なほど深刻な際は別途受診を促すことも考慮する。

 

 

Q)多方向肩入れをする際に気をつけることは。

言葉にしなくても良いが、その場にいる人だけに肩入れをするのではなく、いない家族まで肩入れする気持ちを持っておく。また、「あなたはそう思うのですね」と相手を主語にしてサマライズや声かけをすることで、他の人は他の考えを持っている可能性があることを暗に伝える(共感)。

ただ、ラポールがまだ築けていない時や人との距離をとりがちな患者さんに対しては冷たい印象を与えることもあるので注意。その時はあえて「Iメッセージ」で同情的に伝えることもある。

 

 

Q)怒りをぶつけられた際に、陰性感情や無力感を感じるがどうしたら良いか。

まず、陰性感情や無力感は支援者に移りやすい(陰性転移)ので、自分の陰性感情や無力感は相手も感じている可能性もあることに気がつくことが大切。

その上で、こちらに非がある場合は謝罪することが大事だが、大抵の場合はそうでない怒りぶつけられることも多い。言われのない怒りをぶつけられた場合は先ほどの一次感情に考慮する必要がある。怒りの理由がどこにあるのか、何に怒っているのかを聴きながら、大変出会ったことに共感を示すことだけでも十分。

さらに一歩高度な技術として、共感のうち「反映」という「患者さんが気がついていない感情について言葉にする」とラポール形成も早くなるし、患者さん自身に内省を促すこともできるため、それ自体が治療でもある。