家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年度 心療内科での診療を振り返って(10-12月)

2021年4月より心療内科での診察に週2-3日携わるようになり、9ヶ月ほど経ちました。家庭医としても精神疾患や心身症の方の診療はしておりましたが、それでもなお心療内科での診療は日々勉強になることばかりです。 4-9月の学びは以前ブログでまとめてみました…

在宅医療における「命のバトン」

在宅医療の重要な役割の一つに、人生の最期のときを本人とご家族がご自宅で過ごせるようにサポートすることがあります。はじめは不安ばかりだったご家族が、介護をされる中で徐々に変わっていかれる様子をみることはとてもやりがいを感じます。 自宅で最期ま…

母校にて地域医療についての宣伝

母校である昭和大学の「学部横断地域医療実習」の宣伝の動画撮影のために数年ぶりに母校に伺いました! 昭和大学では、4名程度の多職種の学生が一つのグループとなって、1ヶ月もの間に地域の医療機関・福祉施設を回ったり、患者さんに継続的に関わり、議論し…

案外身近に多い「ダブルバインド」

一つのメッセージに複数の矛盾した意味が入ることダブルバインドといい、多いと特に子育てにおいては子どものやる気を削いだり、自己肯定感の低下にも繋がるとされます。極力無くした方が良いのですが、案外身近にも。 「そろそろ帰ろう(帰らないと怒る)」…

見えぬ努力に気づけるように

何かしらの病気を抱えた本人や家族が「普通」にしていること自体、何かしらの努力や苦労を既にされているということ。それは気楽そうに浮かぶ鴨が、水面下の見えないところで絶えず水かきをしているように。患者さんやご家族の見えないところの努力に気が付…

「承認すること」について考える

現場において患者さんを「承認」することはありますが、どこか上から目線のようでもあって嫌な気をするときさえありました。しかし、先日指導医の先生と議論することがあり、承認の面接における役割を考える良いきっかけとなりました。 承認は、褒める・聞き…

思春期のライフサイクルの特徴 〜子どもも揺らぐが親も揺らぐ〜(2023.4.13更新)

思春期は10−24歳がおおよそ相当し、子どもから大人へ肉体的にも精神的にも成長し、学校中心だった社会から社会的な役割も変化する重要な時期である。 思春期は大事な時期である一方、「難しい年頃」と言わる時期でもある。この時期は、感情や考えを言語化す…

【シリーズ心理療法】動機づけ面接 〜診察室で行う“コーチング”〜

日々の診療の中で多くの医療者が時間を費やし、同時に頭を悩ませているのが、患者さんの行動をいかに健康的なものにするかである。 現代医療は人々の健康に大きな恩恵をもたらし、ほとんどの病気が日々の習慣を変えることで大抵の場合は予防または治療か…

健康な家族の考察 〜家族システム論的視点より〜

とある「医療と家族」というテーマのシンポジウムに招聘いただいた。様々な分野の先生も来られていたので、せっかくなので「健康な家族の考察」という少し哲学的なテーマを臨床現場の家族支援の経験や家族システム論の観点から考えお話した。 本記事は講演で…

2021年度 心療内科での診療を振り返って(4-9月)

2021年4月より心療内科での診察に週3日携わるようになり、半年ほど経ちました。振り返ると、日々勉強になることばかり。正直、診療を始める前にも、精神疾患や心身症の診療は自信がそこそこあったし、メンタルヘルス領域の勉強もしていたのですが、想像以上…

2021年上半期の心療内科の診療を振り返って 〜実際の診療の様子〜

心療内科での診察に週3日携わるようになり、5ヶ月ほど経ちました。振り返ると、日々勉強になることばかり。正直、診療を始める前にも、精神疾患や心身症の診療は自信がそこそこあったし、メンタルヘルス領域の勉強もしていたのですが、想像以上にできておら…

メンタルヘルス領域における非専門医の役割について

7年間家庭医として地域のかかりつけ医の仕事をしてきました。しかし、色々と思うところや、出会いもあって、4月からはとある病院の診療内科にも勤務することになりました。こちらの記事は別のサイトで4月の勤務直前にメンタルヘルス領域に対する考えをまとめ…

【活動報告】8月30日 ファミラボにてレクチャー『家族志向ケアの基本原則と目標』

運営しているオンライン・コミュニティ『ファミラボ』で「家族志向ケアの基本原則と目標」についてお話させていただきました!家族志向ケアの根底理論・原則さらにその源流の家族療法の歴史についても触れました。歴史を紐解くと、家族療法の試行錯誤の過程…

父親の育児参加の重要性について

とある医療系団体にて、子育て支援についてお話をする機会をいただきました。お話しながら感じたのは、日本でも父親の育児参加への理解が社会の中でもっと進めばいいなということです。最近では「コペアレンティング(共同療育者)」という概念があり、東北大…

【活動報告】7月28日 聖路加国際病院にてレクチャー 『明日から使える動機づけ面接のエッセンス』

聖路加国際病院にて『明日から使える動機づけ面接のエッセンス』というテーマでお話しさせていただきました! 内科の先生が対象とのことで、日々患者さんを健康行動に導くことに苦労されていると思い、家庭医外来でもよく駆使する行動変容の技法の一つ「動機…

【活動報告】7月27日 山口大学総合診療プログラムにて講演 『家族志向ケアの実践とポートフォリオの書き方』

本日は山口大学総合診療プログラムにお招きいただき『家族志向ケアの実践とポートフォリオの書き方』というテーマでオンラインでお話しさせていただきました! 家族志向ケアの家族アセスメント・カンファレンスの要点を軽くお話しし、あとはシナリオ・ロール…

【シリーズ心理療法】支持的精神療法 〜「支える」とは何か〜

医療行為において医療者の「支持」は絶対に必要であり、あらゆる医療行為の根底にあると言ってもいいすぎる事はない。一方で、患者を支持しすぎるが故、関係性が近づきすぎ、治療に不具合が生じたり、トラブルに巻き込まれることも医療者であれば誰しもが経…

【シリーズ家族療法】問題が問題でなく問題の解決法が問題であり、悪循環を断ち切る方法 〜コミュニケーション・アプローチ〜

はじめに 「健全な家族とは何か?」 これに答えることは難しい。特に、戦後夫婦を基本的要素とするような典型的な核家族像は現代においては一つの理想の家族の姿として目指していたが、多様な家族形態を受け入れるように進む現代においては、より一層定義が…

【シリーズ家族療法】人生において“大切な人”との関係を支える方法 〜アタッチメント理論 後編〜

はじめに アタッチメントは日本語で「愛着」ともいい、物事に深く心を引かれ、離れがたく感じる事をいいます。よく赤ちゃんと親がべったりすることを「愛着形成」というように使われ、子どもの発達において大事な要素とされています。 しかし、近年、愛着は…

【シリーズ家族療法】人生において“大切な人”との関係を支える方法 〜アタッチメント理論 前編〜

はじめに アタッチメントは日本語で「愛着」ともいい、物事に深く心を引かれ、離れがたく感じる事をいいます。よく赤ちゃんと親がべったりすることを「愛着形成」というように使われ、子どもの発達において大事な要素とされています。 しかし、近年、愛着は…