家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

2020-01-01から1年間の記事一覧

【シリーズ家族療法】家族の歴史を紐解き、同じ過ちから抜け出す方法 〜多世代家族療法〜

はじめに なぜこの家族の家系は同じような過ちを犯すのだろう?虐待の歴史を繰り返す家系、アルコール依存症の歴史を繰り返す家系、離婚を繰り返す家系など。そのように思ったことはありませんか。 家族の歴史はなぜ繰り返されるのか?そこに理論的な裏付け…

家族構造療法について 〜家族が変わると、個人が変わる〜

家族構造療法とは 家族構造療法は、1960年代に小児科医サルバドール・ミニューチンを創始者とした家族療法の一群で、個人の問題は、家族構造上の問題の反映であるとし、家族構造が変化するような介入を行い、個人の症状の回復を図ろうとする療法です。 すな…

【資料】青年期のライフサイクルを考える ーカップル形成期を中心にー

日本では結婚後の問題を話し合う場所は少ないですが、アメリカにおいては結婚後のカップルの関係が難しい場合に相談する「結婚相談所」がポピュラーなものとして存在します。その起源は、1940年代にプライマリケア医は精神科医・ソーシャワーカー・牧師と一…

【資料】コーチングの基本 〜人を導く方程式〜

コーチングは、ビジネスをはじめ様々な業界で活用され、コーチングを利用することで仕事の目標を明確にし、効果的に達成することに注目が集まっています。近年では、医療分野でも活用されるようになっており、様々な研究がされています。 私も何度か研修を受…

【資料】在宅医療の概要と実際

近年、国で推進し注目される在宅医療。その理由に、少子高齢化による医療資源の圧迫という社会課題の解決や、自宅で最期を迎えたい人が多いことが主に挙げられる。 また、在宅医療は入院医療、外来医療に次ぐ第3の医療と言われ、病院中心だった医療に様々な…

【書評】「働き方5.0」 落合陽一著

はじめに 「AIによって人の仕事は取って代わられる」と最近よく聞かれますが、医療の仕事でもよくその話は聞き、最近少し考えます。筑波大学の教員であり、メディアアーティストの落合陽一が書かれた「働き方5.0」を読み、とても面白かったのでまとめてみま…

少子化について生物進化学の観点から考えてみる

「生物は繁殖を高めるのに、ヒトはなぜ少子化を辿るのか」 この問いは少なからず誰もが考えたことがあるのではないでしょうか。先日人類学者の方のオンライン講演で「進化生物学」の観点から少子化を紐解いており、非常に面白かったです。 「K型・r型進化」…

幸せな対人関係のための心理学 「交流分析」について

はじめに 交流分析とは 日々の診療の相談で多いのは健康問題ですが、それに負けず劣らず人間関係の相談もとても多いです。親子関係、夫婦関係、学校との友達関係、職場の人間関係など、様々な人間関係の悩みがあると思います。 逆に、人と人との関わりが上手…

書評『結婚生活を成功させる 7つの原則』〜科学的根拠に基づく結婚生活〜

はじめに 結婚生活にはたくさんの方がコメントをされ、さまざまな「噂」が流れています。 しかし、その大半は科学的な根拠に基づくものでなく、 ご自身の知識や経験、直感や信念に基づいて助言をしていることが多いです。 結婚生活が成功なのか、失敗なのか…

現代の学び「経験学習」 ー知識より知恵をー

先日、職場の短期研修者の目標設定を行いました。 その際、現代の学び「経験学習」について改めて考えたのでまとめてみました。 特に、現在のコロナの時代、 普段経験しない体験や感情を経験していると思いますが、 その経験を成長に結びつけるヒントになれ…

夫婦が危機にならないために

私の外来には夫婦で通われている方も多く、 コロナでお互い自宅にいることが増えた影響か、 外来での夫婦の相談事の頻度も増えたように思います。 よくお話をするのが、「2人が問題」なのではなく、 「2人のコミュニケーションが問題」と話します。 コミュニ…

イライラを抑える方法 アンガーマネジメントの視点から

もともとイライラしやすいので、 それを表に出さないようにしようと気をつけていましたが、 昨日はどうしてもイライラしてしまって、 それを他の人にぶつけてしまいました。 怒りはどんな時であれ損することが多いので、 反省を込めて「アンガーマネジメント…

【書評】学力テストで測れない〜非認知能力が子どもを伸ばす〜

はじめに 今までの日本の教育は知識・技術に偏った教育をしてきました。 しかし、それだけでは今の時代は乗り切れないことはおおよその人が思っています。 人工知能やIoTが発達し、 知識や技術はロボットの方が人間より正確かつ早く対応できると言われ、 人…

在宅医療で必要な3つの力

はじめに 通常医療では問題の原因を見つけ、 それに対して解決の道筋を立てていく「問題解決能力」が重要視されます。 しかし、在宅の現場では必ずしもその能力が活かされるとは限らず、 場合によってはその能力が足かせとなることさえあります。 在宅では問…

家族ライフサイクルからみる人生の流れ

家族から学ぶことはたくさんありますが、 一体何を学んでいるのか時々わからなくなります。 一つそれを言語化したものに「家族ライフサイクル」という考え方があります。 人は家族が拡大する中で「役割」が徐々に変化し、学びが変化していきます。 人は成長…

悲嘆(グリーフ)は立ち直るもの?

悲嘆(グリーフ)に陥ったご遺族の方から、 このような言葉が胸に突き刺さると聞きます。 「○ヶ月(年)も過ぎたんだから元気出してね。」 「お子さんもいるんだし、あなたが頑張らないとね。」 「泣いてばかりいると、亡くなった○○も悲しいよ。」 「そんな…

世界における日本の保険制度の位置付け ーユニバーサル・ヘルス・カバレッジの視点からー

先日院内の勉強会でユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以下UHC)について話題になり、 世界の医療制度を学ぶ貴重な機会でした。 UHCとは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」こと。 2015…

20代の夫婦から感じた「愛着」の重要性

人は「愛着」の対象を必ず必要とします。 20代の夫婦から「愛着」の重要性を感じました。 「夫が子供みたいで呆れます。病気なんですか?」 そう話すのは、最近結婚したばかりの20代の女性。彼女は過呼吸が頻回出るようになったのがきっかけで当院を受診しま…

育児で時短勤務をしてみて

育児のために2月の1ヶ月間(生後1ヶ月)を時短勤務いたしました。 時短勤務のおかげで、育児の基本や子供の日々の成長に目を向ける心の余裕ができたのは大きかったです。 何よりも、育児の辛さを少しだけでも妻と共有できたのが宝です。 一緒にいるときは極力…

コロナウイルスをきっかけにオンラインによる学習を今後も学校に

コロナウイルスにより急遽学校が休校になり、オンライン学習サービスが提供され、さらにはオンライン授業も行う学校も出てきています。 これをきっかけに「生徒が集まって行う授業の意味」について考えられたら良いのかなと思います。オンラインでの学習は学…

【活動報告】若手家庭医向けの家族図ワークショップ開催

若手医師のための家庭医療学セミナーで家族図のワークショップを家庭医の先生向けに行いました。 前半は家族図の書き方・読み方・聴き方を学び、 後半は実際に家族図を書いて、参加者がペアになって面接をしました。 中でも一風変わっているのは、 描く家族…

アドラー心理学で考える子育てのヒント

“間違った行動が引き起こす結果こそ最良の教師である” とある心理士さんとのアドラー心理学をベースにした子育て勉強会での言葉です。 アドラー心理学というと、最近まで様々な本が出版されていましたね。 特に「叱らない」「褒めない」関わり方で有名ですが…

コーチング研修会に参加してみて

“コーチングはティーチングでもカウンセリングでもない双方向性のコミュニケーションである” コーチングの2日間の研修会に参加してきました。 「コーチ」というとスポーツや競技でよく聞きますが、 1980年代からアメリカではビジネスの世界に「コーチ」をつ…

老いる意味は何か?

“老いによってあらゆる面が衰退することで、人生を振り返ろうと思うようになる。 死に近づくことで、後世に何を遺すか真剣に考えることができる。” とある患者さんと外来で話した時に、腑に落ちた言葉です。 その方はもともと私の外来に来られていましたが、…

人の罪悪感を受け入れる

“亡くなった方に罪悪感を覚えるのには、その亡くなった方を大切に思っている証拠。だからむやみに否定しない” とあるグリーフケア関連の勉強会での医療者の一言です。 人が罪悪感を感じていると、ついそれを軽減しようとします。 否定したり慰めたりと。 た…

書評『子どものための精神医学』 発達障害診療を俯瞰した支援者のための一冊

近年「発達障害」が社会的なテーマになってきました。 それは子育てや教育現場だけでなく、大人の発達障害として働き世代の間でも扱われます。 そのため、巷ではたくさんの発達障害支援のマニュアル本やハウツー本がたくさんあります。 しかし、子供たちは各…