家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

合同面接で深い感情(一次感情)をいかに扱うか 〜家族心理学会主催の研修会に参加して〜

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先日、家族心理学会主催の「夫婦・父子並行面接のケーススタディ」の研修会に参加しました。

家族内の葛藤や意見対立を認める際、個々に本音を聞こうと個別に会って面接する場面がよくあると思います。確かに、個人の面接では患者さんや家族の本音を深く聞き出しやすくなります。

しかし、個別の面接では家族間のやり取りが見えにくかったり、互いの考えを共有できなかったり、何よりも家族それぞれが支援者と話していることを他の家族が知った時、家族内の不安や不信感を増大させることもあります。

そのため、家族で一緒に話し合う家族合同面接(または家族カンファレンス)が重要となりますが、そこには難しさもあります。

家族間の葛藤が目の前で再現されると支援者の心理的負担が増し、場合によっては巻き込まれたり、意見の対立に不均衡に肩入れすると診察がドロップアウトする可能性があります。

本研修では、合同面接のコツを講義だけでなくロールプレイを通して学ぶことができました。

特に印象的だったのは、表面的な感情(二次感情)ややりとりの裏にある深い感情(一次感情)までをどれほど合同面接で扱えるか、です。

例えば、互いに批判し合う家族において、相互に向けられた怒りを扱うだけでは不十分で、奥底の嫌われたくない思いや孤独で理解してほしいという一次感情まで扱えるかが面接の結果を左右します。

過去の経験を振り返ってみても、面接で一次感情まで扱うことができた時、家族の関係性が変化したことを思い出します。

これを合同面接で扱うことは個人面接で扱う以上に難しく、それだからこそ重要性であると改めて思いました。

研修を通じて、普段の診療を見直すとても良い機会になりました。

※写真は先日京都に行った際に立ち寄ったイノダコーヒ本店(コーヒーではない)の写真。京都に溶け込む町家造りの外観から想像できない、昭和のレトロな雰囲気。本研修とは関係ありません。笑