家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

第2回地域医療学会学術大会にて家族支援のセッション開催

先日三重県志摩市で開催された第2回地域医療学会学術大会に参加致しました。

大会長代理の日下伸明先生より急遽声をかけていただき、村山愛先生、若林英樹先生と家族支援のセッションを行いました。

20分お話をした後、残り時間はずっとディスカッションでしたが、実践的なご質問をいただき、より実践に則した対話になったと思います。対話形式、いいですね。 

認知症等で対話できない本人・家族の関係で意識することは?

・パートナーとの関係がうまくいかず身体化。ただしパートナーは来られない場合、どう関わったら良いのか?

摂食障害の本人と家族で距離が近いと感じる時にどう関わったら良いのか?

地域医療の先生方が、普段から難しい患者さんの心理社会的側面まで真摯に向き合われていると感じました。

だからこそ難しい事例を気軽に相談できる場や機会を提供し続けたいと改めて思いました。

後日オンデマンド配信も予定ですので、関心ある方は是非今からでもお申し込み下さい。

www.jach.or.jp

学会帰りにせっかくなので、生まれてはじめて伊勢神宮に参拝し、荘厳な雰囲気の中、神聖な気持ちに。2000年の歴史を有する日本の精神的支柱の重みを感じました。

先々週登壇の依頼をいただいたのですが、急な予定にも「行ってきたら」と背中を押してくれた妻に何よりも感謝です。ただ、お土産にへんば餅と赤福のぜんざいを買ってきてと。

JPCAメンタルヘルス委員による公開ケースカンファレンスを行いました

10月22日に日本プライマリ連合学会メンタルヘルス委員でオンライン公開ケースカンファレンスを行いました。休日にも関わらず50名ほどの方が参加くださいました。

専攻医の先生から事例提示いただき、その後ディスカッションを行いました。

話題に挙がった内容をざっとあげると、

PMS適応障害の鑑別、適応障害うつ病の鑑別
SSRISNRIの使い分け
・職場環境を産業医的観点からどのように確認するのか
精神疾患となった時に重大な決断をして良い時と良くない時の見分け方
逆転移に気がつくポイント、気がついたときにどうしたら良いのか
アジェンダを立てる際のコツ
・診療時間が長くならないようにするためのコツ
・精神科紹介時の紹介状作成時のコツ
・途中で双極性障害やパーソナリティ障害を疑った時にどうするか
・途中で発達特性が気になった時にどうするか
・プライマリ・ケアで見れる疾患の範囲

たくさん実践的内容が議論され、個人的にも学び多い時間でした。

特に勉強になったのは、心理士さんが考えている心理アセスメントをどのようにクライエントに伝えているのか?発達検査含む心理検査をする際にどのように声かけしているか?などです。

想像していた以上に多くの方が参加してくださり、また会の進行中にもチャット欄に多くの意見や質問を記載いただき、大変盛り上がっておりました。

ただ、時間の都合上全てを拾いきれず、他にも反省点も多くありました。今後に活かしていければと思います。

スーパービジョンと事例検討は同じように使われることもありますが、異なります。より学習者(スーパーバイジー)が何を考え、何を感じ、何を学ぼうとしているのかをくみ取り、深めていくのがスーパービジョン。

メンタルヘルス領域は個別性が強く、アプローチが複数あることも多いため、スーパービジョンスタイルの方がマッチするし、同時に「人して」も成長できる、そんな場を準備できたら素敵だなと思いました。

今後もメンタルヘルス委員の企画として続けていけたらと思います。

ずっと会を準備くださっていた新野青那先生、本当に貴重な機会をありがとうございました!

浦安市医師会主催「在宅薬剤管理勉強会」

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10月20日浦安市医師会主催で在宅薬剤管理の勉強会を行い、司会をさせていただきました。

いつもお世話になっている訪問看護ステーションあゆみ竹内さん、タカハシ薬局高橋さんにご登壇いただき、在宅薬剤管理の制度から実践の工夫までお話しいただきました。

医師、薬剤師、看護師、保健師、ケアマネなど80名もの方が参加してくださいました。講演は大変勉強になりましたし、その後グループディスカッションも盛り上がりました。

特に印象できだったコメントは「薬剤管理だけになってはいけない。生活全体を見る中で自然とその人にあった薬の飲み方や管理の仕方が見えてくる。」という言葉です。

深く共感しますし、病気の治療に関しても同じことがいえ、専門職の仕事全般に言えることかもしれないと思いました。

また、患者さんと関わるコツに「患者さんとの関係を作るのにはじめは腰低く関わる」「ちょっと薬に詳しいお兄さん的な立場で関わる」と話されておりました。

私も無意識にそうしているなと思うと、患者さんの深く生活に関わる方々の共通項なのだと実感しました。

薬剤管理は個別性が強いからこそ悩みも多いです。しかし、だからこそ工夫できるところも多く、職種を超えて色んな関係者の人の知恵を出し合うのが良いと会を通して感じました。アンケート結果見てもそう感じられた方が多かったです。

浦安市は元々地域の職種間のつながりが深いですが、さらにその連携が深まるのを感じた素敵な場でした。

お話しいただいた高橋さん、竹内さん、ご準備いただいた浦安市医師会事務局の皆様、本当にありがとうございました。

家族カンファレンスで大切なことはファシリ力

昨日は亀田家庭医の専攻医の先生方との「家族志向のプライマリ・ケア」の輪読会でした。

輪読会では本を題材にいろんな意見や鋭い質問が飛び交い、家族志向のケアの理論を実践に落とし込む非常に良い機会になっています。

個人的に印象的だったのは「家族との話し合いは家族面談や家族カンファレンスといい、アセスメント、カウンセリング、セラピーと呼ばない」という本の一説。

 家族と治療者が話す目的には「治療者が家族を評価する」「治療者が家族を治療する」「治療者が家族を指導する」といった治療者主体のものではなく「家族が何に問題や困難を感じているのかを共有する」「家族がどのように解決しようとしているのかを共有する」「家族が話し合いを促進できるようにする」と家族に重きを置くことが大切です。

そうなると、家族カンファレンスにおける医療者の役割は治療者や指導者としてだけでは不十分で、対話を促進する「ファシリテーター」の役割が求められ、安全・安心な場づくり、対話を深めること、対話を促進することなんかが大事なのだと思います。

以前ファシリテーターのワークショップに参加したときに「最初はファシリが誘導しても、後半では参加者同志で勝手に話が進むように場を作りなさい」と言われたのを思い出しました。

カンファレンスの中で結論を出すというのはあくまで表面的な目的であって、その真の目的は対話することであって、そのプロセスの中でいろんな考え方や価値観が共有されていくことななのでしょう。

ACPといった個々の価値観が強く影響し、どれもが答えであるような話し合いにおいては特に。

なので「家族カンファレンスの上達の近道は、色々なグループの中で司会をすること」とその場の思いつきで後輩たちにメッセージを送りましたが、本当にそうだなと実感します。

JPCA秋季セミナーにて家族志向のケアWS開催

9/23-24に日本プライマリ・ケア連合学会(JPCA)秋季セミナーにて『日常診療に役立つ家族アセスメント・家族面談の基本』『高齢者診療で役立つ家族アセスメント・家族カウンセリングの技法』を行いました。

www.primarycare-japan.com

全体としては、レクチャ・グループワークに加え、実際のロールプレイを行なっていただきましたが、その評価が高かったのが印象的です。

・実践的で言葉選びが学びになった

・緊張感があってよかった

・家族面接のフィードバックをもらうことよかった

・患者・家族の気持ちを追体験できることがよかった

などの感想をいただきました。ロールプレイを通した面接技術の向上だけでなく、患者・家族の疑似体験ができるので、その可能性を感じました。今後に繋げていきたいです。

日常診療に役立つ家族アセスメント・家族面談の基本

JPCAメンタルヘルス委員会の皆様と一緒に家族志向のケアのワークショップを行いました。準備段階からいろんな意見をいただき、メンタルヘルスにおける家族志向のケア/家族療法の位置付けについて考える良いきっかけとなりました。

精神疾患の発症の原因として家族を診るのではなく、経過に影響を与えるリソースとしての家族という視点がとても大切だと感じました。

レクチャーに加え、うつ病の女性とその家族という難易度高めの事例の家族アセスメントやシナリオロールプレイを行いました。シナリオは事前にセリフを準備し読んでいただく形式にしましたが「言葉の選び方が学べた」「家族の追体験できた」等の感想もあり実践的な学びができたのではと思います。

参加者の方から精神疾患の家族とその支援はハードルが高いというコメントもいただきましたが、精神科医の先生から幅広い観点・継続性があるプライマリ・ケア医だからこそできる家族支援があるとの勇気づけられるコメントもいただきました。

精神疾患を抱えた患者とその家族の支援、とても大切なテーマだと思いました。

 

高齢者診療で役立つ家族アセスメント・家族カウンセリングの技法

レクチャーに加え、認知症の女性とその家族の家族アセスメントやシナリオロールプレイを行い、実践的な内容を意識しました。

シナリオの家族アセスメントをグループワークで考え、グループ毎にそれを元に自由に医師・患者・家族総勢5名の家族カンファレンスを演じていただきました。皆様非常に演技がお上手で白熱しておりました。笑

特に印象的だったのは認知症の患者さん役だった方が、途中で泣かれたことです。聞くとそんなつもりはなかったのに、家族に色々と言われて悔しくなってしまったとのこと。

患者さんの気持ちを追体験するのはなかなかないので、非常に良い経験でしたとコメントいただきました。

面接スキルを磨くだけでなく、患者さん・家族の疑似体験できる家族面談のロールプレイ学習の可能性を感じます。

 

両者オンデマンド視聴もありますので、関心ある方はぜひご視聴ください!(申込要)

www.primarycare-japan.com

 

最後まで読んでくださりありがとうございました!

「在宅医療における家族支援」@家族療法学会のワークショップ開催

「在宅医療における家族支援」@家族療法学会のワークショップを終えました!

家族療法学会には、医療分野に馴染みが少ない心理士さんが多くいらっしゃると考え、在宅医療に関心を持っていただき、今後どんどん参加いただけることを目標にワークショップを行いました。

心理士の方が大半で、他にソーシャルワーカー、ケアマネージャー、医師(精神科医・総合診療医・外科医)、看護師の方が参加してくださいました!精神科医の先生も参加してくださりました。

いろいろな意見を聞きたいと5時間のワークショップのうち、レクチャーとグループワークちょうど半分ずつとしましたが、アンケートを見ると反響も良かったです。

前半は在宅の現場の紹介や家族と関わる上での特徴を中心にレクチャーを。後半は、普段で現場で扱う困難事例のケースのディスカッションを扱いましたが、心理士さんの切り口が本当に斬新で、在宅医療に心理士の方が関わる可能性を感じました。心理士さんを交えた多職種カンファレンスの様で非常に面白かったです。

また、在宅医療における家族療法の可能性に関してグループディスカッションを行いました。様々なアイデアが出たと共に、心理士さんが在宅医療に関与する(そもそも身体科の医療現場にも?)上での壁も徐々に見えてきました。

共通言語の乏しさ、診療報酬システムが追いつかない、現場の余白の不足など。

それと、精神科で訪問診療されている先生もいらっしゃり、在宅医療の制度面で感じていらっしゃるモヤモヤも共有くださり、大変勉強になりました。

その中でも在宅医療や身体科の医療分野に心理士さんとが連携しながら関わっている医療機関もあることを知れました。在宅医療における家族療法やメンタルヘルスについてしばらく対話を重ねていきたいです。

貴重な機会をくださった若林英樹先生、素晴らしい講演をしてくださった山田宇以先生、永嶋有希子先生、講演とともに精神医学・家族療法の観点からご指導くださった渡辺俊之先生ありがとうございました!

来年の学術大会は金沢で開催されます。なんと、家庭医業界で有名な「医師の家族へのかかわりの5段階」のラダーを考えた米国家族療法家William Doherty氏が来られます。

大会長に小笠原知子先生、実行委員長は若林英樹先生、私も実行委員を務めることとなりました。プライマリ・ケアで関わる医療者も関心を持てる企画も考えていきたいと思いますので、ぜひ来年は金沢の学術大会にお越しください!

 

日本家族療法学会第40回福岡大会に参加

9/16-17に開催された家族療法学会学術大会@福岡に参加いたしました!
 
5年前に参加した時はまだまだお知り合いも少なくアウェイな感じがありましたが、今はお知り合いも増えていろんな方との交流が楽しかったです。でも、本や講座などで一方的に存じ上げている著名な先生も多く、まだまだミーハーな気分は抜けきれていませんが。笑
 
他の学会もそうですが、メインシンポジウムがオンデマンド配信されるため後で聞けるようになり、いろんな方との交流を楽しむことができました。
 
また、配信されないような事例検討や小さなシンポジウムに参加できるようになり、普段とはまた異なる学びができるようになりました。
 
ナラティブ・セラピー、オープンダイアローグ、リフレクティング・プロセスの実践が含まれた発表が多いと感じましたが、中でも個人的に新しいと思ったものとして(まだ咀嚼できていませんが)

 

・「人としてのセラピスト(POTT:Person of therapist)」への注目:セラピストも関わる上で様々な影響を受け、変化する。特に家族と関わるとセラピスト自身の心の家族や現在の家族の影響を強く受けるので、その葛藤とどのように向き合い成長をどのようにするのか。
 
・PTMF(Power Threat  Meaning Framework)という概念:何か困った症状の背後にある「パワー:Power」と「意味づけ:Meaning」に着目する。ナラティブが「意味づけ」に重点をおいたと考えると、さらにその前の「パワー」に着目するのが面白い。問題をさらに外在化しやすくなる。
 
・欧米からアジアの家族療法へのシフト:今まで欧米中心だった家族療法が、韓国・台湾・中国といったアジアにも広がりつつある。家族療法は家族の文化の影響を強く受けるので、新しいスタイルの家族療法ができつつある。日本の家族療法はそこに類似する。
 
他にも、虐待の加害者支援、合同面接をどのように教えるのか、逐語録を使ったシナリオ作成なんか面白かったです。勉強していきたいと思います。
 
家族療法学会の学術大会も今年で40周年。これまでの家族療法を振り返る企画も大きく、これからの世代へのバトンを渡そうという雰囲気に溢れていました。何かが芽吹き始めることの可能性を感じた学術大会でした!
 
今日は在宅医療における家族支援というテーマでワークショップを行います。家族療法学会で在宅医療の企画はなかなかないと思うので、どんな感じになるのか楽しみです!
 
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