家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

家族カンファレンスで大切なことはファシリ力

昨日は亀田家庭医の専攻医の先生方との「家族志向のプライマリ・ケア」の輪読会でした。

輪読会では本を題材にいろんな意見や鋭い質問が飛び交い、家族志向のケアの理論を実践に落とし込む非常に良い機会になっています。

個人的に印象的だったのは「家族との話し合いは家族面談や家族カンファレンスといい、アセスメント、カウンセリング、セラピーと呼ばない」という本の一説。

 家族と治療者が話す目的には「治療者が家族を評価する」「治療者が家族を治療する」「治療者が家族を指導する」といった治療者主体のものではなく「家族が何に問題や困難を感じているのかを共有する」「家族がどのように解決しようとしているのかを共有する」「家族が話し合いを促進できるようにする」と家族に重きを置くことが大切です。

そうなると、家族カンファレンスにおける医療者の役割は治療者や指導者としてだけでは不十分で、対話を促進する「ファシリテーター」の役割が求められ、安全・安心な場づくり、対話を深めること、対話を促進することなんかが大事なのだと思います。

以前ファシリテーターのワークショップに参加したときに「最初はファシリが誘導しても、後半では参加者同志で勝手に話が進むように場を作りなさい」と言われたのを思い出しました。

カンファレンスの中で結論を出すというのはあくまで表面的な目的であって、その真の目的は対話することであって、そのプロセスの中でいろんな考え方や価値観が共有されていくことななのでしょう。

ACPといった個々の価値観が強く影響し、どれもが答えであるような話し合いにおいては特に。

なので「家族カンファレンスの上達の近道は、色々なグループの中で司会をすること」とその場の思いつきで後輩たちにメッセージを送りましたが、本当にそうだなと実感します。