家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

映画「恋妻家宮本」からみるライフサイクル ー子供の巣立ち期の夫婦の課題ー

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『恋妻家宮本』は重松清の原作『ファミレス』を実写化した映画です。
「子供の巣立ち期に訪れる夫婦の危機」がよく描かれています。
 

あらすじ

子供が独り立ちした中学教師の宮本陽平(阿部寛)と妻・美代子(天海祐希)は、
25年ぶりに訪れた夫婦二人きりの生活に困惑します。
 
ある夜、妻側の記入欄がきっちり記載された離婚届を陽平は見つけます。
 
陽平は激しく動揺しますが、
美代子に意図を聞き出すこともできず悶々とした日々を過ごすことになります。
 
混乱しながらも彼は、
料理教室の仲間や教え子と関わる中で家族の在り方を見つめ直します。
 
ライフサイクル「子供の巣立ち期」で起こる問題をよく表しています。
 
ライフサイクルの中で「夫婦」から始まった暮らしは、
子どもが生まれて「両親」の暮らしになり、
子どもの独立後、再度「夫婦」に戻ります。
 
再度夫婦に戻る上でのポイントは、
両親の関係をそのまま夫婦の関係に持ち込むと、
不適合が起きることです。
 
映画でも、
今までお互いを「お父さん」「お母さん」と呼び合っていた陽介と美代子が、
「これから名前で呼んでね」と美代子が陽介に言いよるシーンがありました。
 
呼び方を変えるというのは、
両親の役割から夫婦の役割に戻るということのわかりやすい方法なのかもしれません。
 
大切なのは、夫婦関係と両親関係の違いを知っておくことです。
 
家族療法の中では、
夫婦関係は「関係性」で成り立ち、
両親関係は「機能性」が成り立つといわれます。
 
両親は子供に対して父性・母性を伝える必要があります。
両親で伝えられればそれに越したことはありませんが、
 
単身夫婦や親の機能不全がある場合は、
祖父母・親戚や、里親などがその代わりをすることもあります。
 
両親は父親役・母親役といった機能性が大切で、
「交換可能な関係」であるともいえます。
 
しかし、夫婦は機能性だけを行なっていても満たされません。
それぞれが夫・妻の役割を演じているだけでは、虚しさを感じます。
 
夫婦の間には、お互いがロマンを高め合う関係性が必要です。
それは「交換不可能な関係」であるからこそ高めあえるのかもしれません。
 
結婚したての時が一番よかったというカップルは多いでしょう。
 
しかし、大切なのは最初のロマンティシズムを、
いかに両親になった時も、
再度夫婦に戻った時も形を変えて維持することです。
 
そうでないと、子供が独立した後に子育ての目的を失った両親は、
夫婦関係を続けていく目的を失い、
互いに不満はなくとも不安しかない関係になるでしょう。
 
その結果として熟年離婚やそこまでならなくても
互いが「単に一緒に住んでいるだけ」の関係になるでしょう。
 
両親としての機能生活が終えたら、
お互いのお父さん・お母さんとしての役割を一旦置き、
 
今一度夫婦としての関係性を見つめ直し、
そこにロマンがなければ作り直す必要があります。
 
さて、陽介と美代子は
失われた夫婦のロマンを取り戻すことができたのでしょうか。
 
気になった方は映画を是非みてみてください!
 
 

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