家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

家族ライフサイクルからみる人生の流れ

floating green leaf plant on person's hand
家族から学ぶことはたくさんありますが、
一体何を学んでいるのか時々わからなくなります。
 
 
一つそれを言語化したものに「家族ライフサイクル」という考え方があります。
人は家族が拡大する中で「役割」が徐々に変化し、学びが変化していきます。
 
 
人は成長して、いつかは結婚して子供を持ちます。
子育ての中で、様々な苦労や経験を経て親になります。
 
 
子供も成長して、いつかは結婚して子供を持ちます。
子供も子育ての中で、様々な苦労や経験を経て親になります。
親は子供の子育てを支える中で、様々な苦労や経験を経て祖父母になります。
 
 
子供の子供も成長して、いつかは結婚して子供を持ちます。
子供の子供も子育ての中で、様々な苦労や経験を経て親になります。
子供も子供の子育てを支える中で、様々な苦労や経験を経て祖父母になります。
親は子供が子供の子育てを支える様子を見守る中で曽祖父になります。
 
 
古典的家族ライフサイクル(人が結婚して子供を持つことが前提)の話になるので、
少し古臭い考え方なのかもしれませんが、確かにと思わされます。
 
 
家族が拡大すれば、自分が主役というよりも、
一線を退き、支える・見守る側になる必要性が出てきます。
 
 
しかし、そこには葛藤も生じます。
自身が一線を引くことはある種の寂しさを伴います。次の世代を育てることに関心が持てないかもしれません。また、「支えること・教えること」は主役であることとは違う成長が必要となり、その課題に向き合うことは辛いことです。
 
 
「発達段階」で有名な心理学者エリクソンでは、壮年期(40-65歳)でぶつかるこれらの壁を「停滞」と呼びました。ここがうまくいかないと、育児の問題や、実家との問題につながります。
 
 
逆にその課題を乗り越えることで得られる「力」を「世話(care)」と呼びます。
そして、このサイクルは家族に限らず仕事でも同じなのかもしれません。
 
 
人は成長して、いつかは部下を持ちます。
指導の中で、様々な苦労や経験を経て上司になります。
 
 
部下も成長して、いつかは部下を持ちます。
部下も指導の中で、様々な苦労や経験を経て上司になります。
上司は部下の指導を支える中で、様々な苦労や経験を経て上司の上司になります。
 
 
部下の部活も成長して、いつかは部下を持ちます。
部下の部活も指導の中で、様々な苦労や経験を経て上司になります。
部下も部下の指導を支える中で、様々な苦労や経験を経て上司になります。
上司は部下が部下の指導を支える様子を見守る中で上司の上司の上司になります。
 
 
同じ組織にいても、その役割は徐々変わっていきます。
より組織が拡大すれば、自分が主役というよりも、
一線を退き、支える・見守る側になる必要性もあるかもしれません。