はじめに
通常医療では問題の原因を見つけ、
それに対して解決の道筋を立てていく「問題解決能力」が重要視されます。
しかし、在宅の現場では必ずしもその能力が活かされるとは限らず、
場合によってはその能力が足かせとなることさえあります。
在宅では問題解決能力以外にも様々な能力が求められます。
本ブログでは、個人的に在宅で必要だと思う3つの能力について書いています。
①関心を持っている思わせる力「雑談力」
在宅医療の目的は、病気の治療だけでなく、
快適な療養環境を支えることです。
そのため、病気が治癒しても、医療者・患者関係性は続きます。
患者さんが亡くなるまで関係が続くことも少なくありません。
長期的な関係になるならば、
関係性が良いに越したことはないでしょう。
しかし、良い関係を維持するためには、
こちらが病気や健康だけ気にするだけでは難しいです。
患者さんから「関心を持っていると思われること」がとても大事になってきます。
そのために一番効果的なのは、相手の話を聞くことです。
ただ、単なる世間話をしていても信頼関係を縮められるわけではないし、
診療の時間は限られています。
そこで必要なのが「雑談力」です。
自分が言いたいことをノープランで話し、
なんの実りもないのが世間話で、
それに対して、会話のなかで相手の情報を得ながら距離を縮め、
信頼関係を築くのが雑談です。
雑談力を身につけることで、
限られた時間で医療者・患者関係を縮めることができます。
在宅医療の関係性の目指すところは、
「あの人には会うだけで、元気になるからまた会いたい」
と思ってもらえる関係です。
②不確実性に耐える力「中腰力」
在宅医療は不確実なことの連続です。
問題が出現したとしても行える検査や治療は限られ、
病院で検査を受けることを好まない患者も多いです。
そのため病態が分からず自宅で経過を見続けることが多いです。
原因をすべて明らかにしないと診療ができないというのは、
在宅では通用しません。
また、患者さん・家族の方針の変更に振り回されることも多いです。
治療を受けたくないと言っていた患者さん・家族が、
急にやっぱり治療を受けたいと変わったり、
自宅で最期まで過ごしたいと以前は言っていても、
看取りの場に処するとやっぱり入院させて欲しいとなり、
急な方針の変更を求められることはよくあります。
在宅の現場では病態も方針も不確実なことの連続です。
不確実なものに向かうとき、医療者にも不安や恐れがつきまといます。
そこで必要な体力は「中腰力」です。
不確実なものを不確実なものとして、
中途半端さを残したまま関わり続けることを「中腰力」といい、
そこには中腰力の体力が必要です。
③第三の選択肢を紡ぐ力「提案力」
在宅では最善の検査や治療ができない状況が多いです。
行える検査・治療といった物理的資源は病院や診療所と比べると、
どうしても少なくなります。
また、側でサポートしてくれる人的資源も少ないです。
病院では専門的な知識を備えた看護師が常に側にいますが、
家では医療のことに馴染みが少ない家族や、
一人暮らしの方も少なくありません。
最善だと思える検査や治療も在宅ではそのまま適応することができません。
だからといって何もしないわけにいかないです。
最善の選択肢を持ちつつ、
いかに物質的・人的資源が乏しい在宅の現実に適応させていくか、
第三の選択肢を紡ぎ出す「提案力」が必要となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
在宅医療の現場では、「雑談力」「中腰力」「提案力」が必要と述べていきました。
在宅医療の現場では、問題解決思考だけでなく、思考の転換を行う必要があります。
病院医療から在宅医療に飛び込む方の参考に少しでもなれればと思います。