家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

「承認すること」について考える

現場において患者さんを「承認」することはありますが、どこか上から目線のようでもあって嫌な気をするときさえありました。しかし、先日指導医の先生と議論することがあり、承認の面接における役割を考える良いきっかけとなりました。

 

承認は、褒める・聞き入れる・認めるなど様々な状況が一般的には含まれますが、心理療法では「治療者がて、患者反応状況いてのこでり、解可能なもだと」とされます。

 

承認は、心理療法の中でも特に「弁証法的行動療法(DBT)」の中核をなし、DBTは境界性パーソナリティ障害摂食障害・薬物依存などいわゆる「感情調整困難事例」に有効な心理療法です。すなわち、感情調節困難な方と関わる上で「承認」は重要です。

 

承認の奥深さを理解する上で「共感」との違いを考えると理解しやすいです。例えば、患者さんが、病院に来ることに戸惑いながら来られた場合、どのように声をかけるかというと、共感的対応は困難な状態・感情・やる気のなさを受容し、言葉にします。

 

それに対し、承認は共感的側面に加え、やる気が出ない中で、そのような気持ち・考え・行為を経過を通して治療の場にたどり着いたかも仔細に聴き、患者さんなりに症状が改善する方向に努力していることも、事実に即して伝えます。

 

すなわち、共感は「相手の状況や感情をあたかも相手の立場で認識し、伝え返すこと」であり、それだけでは治療が平行線になることもあります。承認は、さらに一歩進んで「相手の状況や感情を認識した上で、相手の最終的な目的に進むために効果的であることを、事実や専門性に即して査定し、妥当であることを伝えること」です。

 

承認には6つのレベルがあるとされます。

 

レベル1:傾聴と観察

患者が何を言っているか、感じているか、行動しているかを傾聴し観察するに加え、聴いたことと観察したことを積極的に理解しようと努めること。

 

レベル2:正確な反映

患者の話を傾聴し、理解したことを正確に伝える。

 

レベル3:言外の言葉を明確化

患者がまだ直接伝えていない直感的理解を正確に言語化する。

 

レベル4:理解できる理由に関して承認

行動とそれに至った原因を理解することができることを伝える。

 

レベル5:現時点で理にかなっていると承認

行動とそれに至った原因を正当化できる有意義なものであると伝える。

 

レベル6:その人を承認できる人として扱う

患者を人としてあるがままに受け止める際に、個人としての強さと能力に注目し対応する。

 

さらに承認やDBTについて知りたい方は、

心身医学領域で出会う"感情調節困難"患者への心理的アプローチ : 弁証法的行動療法,特に承認から学ぶ(ワークショップ,2014年,第55回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(千葉)) がとても勉強になったので、参照にしてみてください。