家庭医の学習帳

千葉県のクリニックで子どもからご高齢の方を日々診療。心療内科・家族支援にも力を入れています。日々考えたことや勉強したことを綴ります。

在宅医療における「命のバトン」

f:id:kamenokodr:20211219224958p:plain在宅医療の重要な役割の一つに、人生の最期のときを本人とご家族がご自宅で過ごせるようにサポートすることがあります。はじめは不安ばかりだったご家族が、介護をされる中で徐々に変わっていかれる様子をみることはとてもやりがいを感じます。

自宅で最期まで過ごすことは、家族に困難を強いり、様々な条件が揃わないと難しいことが多いです。難しい要因の一つで、特に現場で感じるのは、家族で誰もヒトの最期を身近で経験したことがなく、それが介護への不安や恐れを増やしているということです。

近年までは最期を病院で過ごすことが当たり前で、そこにはメリットもあったかもしれませんが、様々な弊害もあり、その一つに「老いや死」を日常から遠ざけてしまったことを現場で痛切に感じます。

確かに、自宅で最期を過ごすというのがすべての家庭にとって一律に良い訳ではないですし、それは一つの価値観に過ぎないのかもしれません。しかし「死の準備」や「二人称の死」を聞くのと、身近で経験するのではまた違います。最期の時期を共に過ごすことは、人生にとても大切なことを教えてくれると思います。

今は自宅で本人・ご家族が最期を過ごす様々な形や支援があり、在宅医療もその一つです。自宅療養は様々な困難を生みますが、それでもなお「良かった」と思えるような経験はご家族にしていただきたいですし、さらにそのご家族の経験は、他の家族や身近な他者に伝搬し「小さな文化の変化」を生むと思っています。

「最期の時を自宅で共にすごせてよかった」そんな声が一つでも多く聞けるようにこれからも頑張っていきたいと改めて思いました!


※冒頭の写真は南房総の訪問風景です